シズコさん/佐野 洋子
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すごく有名なのに佐野洋子さんのエッセイはほとんど読んだことがなかったので

普段の作風なんかは知らないのですが

これはすごく正直で、辛いですね。


うまくいかなかった母娘

いくら親子とはいえ、相性というものは必ずあるわけだから

兄弟の中でも親と波長の合う者と合わない者、それぞれだと

思う。

けれど、子供というのは親に頼るしかないわけで、親に育てて養ってもらうしか

ないわけで。

母を心底好きになることが出来ずにいた著者の辛さや悲しみが伝わってきた。


私も、今は母親とはとても良好な関係だし、勿論小さい頃に関係が

悪かったわけではないが。姉と母がすごく気が合ったのに比べると

きっと育てづらく、理解しがたい娘であったろうと思う。

私も、母・姉・自分の女3人の中での疎外感を感じることも多々あった。


著者の幼少期の思い出は、同じエピソードがたびたび語られ

彼女の思いの強さがにじみ出ている。

痴呆によって、無垢な子供のようになった母の面倒をみることで

ようやく凝り固まった憎しみから開放されていく様が

正直に書かれている。


母に対して、憎しみばかりを書くのではなく。家事は完璧で人当たりもよく

人に頼られる人物だったことも丁寧に書かれている。

シズコさんは、ひどい母親だ。ということではない。あくまでも母と娘の関係。なのだ。


ただ、すごいと思えるのは。「好きになれなくてごめんなさい」というような

感情と、ホームに入れたことで親を捨ててしまったという後悔を

すごく強く著者が持ちつづけるということ。

私が彼女であったなら・・・そんな気持ちになるのかな。と。

そこに強い愛情を感じた